1,老人

太陽が二つある世界があった。一つは広げた手より少し大きいぐらい、もう一つは拳ぐらいの大きさだ。

二つの太陽が照らしている地表は森が所々あり他は草原が広がっている。ただし一箇所だけ目立つ場所がる。石でできた建物だった。

建物はいくつもあり一昔前、中世の町を思わせた。その中に一番広く高くて城に近い建物がある。周りには堀が、人が絶対に飛び越えられないほどの幅で落ちたら絶対に助からない深さで掘ってあった。

ただ一箇所だけ橋が架けてある。その橋は建物に入るための唯一の手段だ。そこを鎧をまとった者が、一瞬にして走り抜けていった。この速さだったら堀を飛び越えられそうなほどで。

その者の顔は動揺を隠そうとしてがんばっていた。


        ◆        ◆        ◆


部屋はものすごく広いがほとんど何もなく、壁に大きな扉が唯一あり周りの壁には窓があるが今はカーテンでしまっている簡素な部屋だ。

「ふぅ〜」

そう深いため息をついたのはフードの付いた真っ黒なローブを着た老人で、髪は何の変哲もない真っ黒な髪、真紅の瞳をしており全身が真っ黒なローブに覆われているため、真紅の瞳はいっそう紅く見える。

老人は何の変哲もない椅子にほお杖をしながら座っていた。椅子に座っているせいで身長はわからないが普通の人ぐらいある。顔には何十年も生きてきた証が何本も刻まれている。表情は、明らかに退屈そうな顔をしている。

「私の話を聞いていましたか?」

少しトゲの入った口調で老人に聞いている男が老人の目の前にいた。

服装は老人とはまったくの正反対の真っ白の服を着て腰には豪華な剣をつるしている。

見た目は4、50才の人だが、よく見ると金色の目で縦に瞳孔が開いており、髪も金髪に染まっている。子供だったら泣き出しそうな顔、猛獣のような顔をしていた。

「あぁ聞いているとも、カイン」

カインと呼ばれた男は、不満そうな顔をして、

「本当ですか?なら私は何といってましたか?」

「私の話を聞いていましたか?と言っていた」

そう言いながら老人は、イタズラをした子供のように満円の笑みをした。

「ふざけないでください」

そうカインは落胆の色を隠さないで怒鳴り言い続ける、

「簡単に言いますと、今回も赤の瞳の者を探さなければいけない時がきています」

「そうだな、そうだな」

老人はただ頷くだけで明らかに何か違う考え事をしていた。

「ですから私の話を聞いてく…… 「た、大変です」

カインの説教は大声でしゃべる者によって中断しなければならなくなった。

「どうした?」

老人は先ほどの子供のような顔から一気に険しい顔つきになり立ち上がった。

そう聞かれたのは扉から入ってきた鎧をまとった男で脇に兜を抱えている。かなり動揺し息切れをしていたが老人と眼を合わせると息を深く吸って一気に、

「先ほど北の森にダークソルジャーらしき者が進入しました。たまたまそこに居合わせた者によると空間魔法で現れたと言っておりました」

「なんだと!?そんなバカな話があるか!この国の住民以外の……」

カインも兵士のいきなりの報告にかなり動揺しながら反論したが老人が止めた。

「その居合わせた者はどうした?」

「かなり驚き色々問いただしましたようです」

カインは口を開いたが、また老人に止められたのでおとなしく口を閉じた。

「それで現れた者は何を言った?」

「それが……何も答えず大剣で切りつけてきたそうです」

「大剣か……切りつけられた者は無事か?」

老人はそう呟き顔は険しさが増した。

「いきなりだったので左腕を切られたみたいですが、何とか逃げて今は大丈夫であります」

その報告を受けた時、老人の顔が少し安心した顔になった。だが元の顔が険しかった為に誰も安心した顔とは気づかなかった。

「その後どうした?」

「私は報告に来たので詳しいことは……5、6人の兵士が出現場所に向かったことしかわかりません」

「案内……場所はわかるか?」

「大丈夫です。私が知っている場所のようなので空間魔法を使うことができます」

ここでようやく老人にしゃべることを止められたカインが老人が行こうとしていることに気付き怒鳴り始めた。

「だめです。そのような危険な場所に行くなど!兵士で大丈夫です」

「いや、ダークソルジャーは大剣を滅多に持たない……いや、一人いたな。だがあいつは黒ではなく蒼だったな……たしかノイン隊長も確かいないはずだな?」

そんな自問自答をした老人は兵士に聞いた。

兵士は、はいの変わりに頷いた。顔には悔しさがにじみ出ていた。

老人は深刻な顔をしながらカインを見た

「わ、わかりました。ただし、私を連れて行ってください!だめなら絶対に行かせません」

カインはしぶしぶ了承したが条件を付けた。不安と不満が入り混じった顔をしていた。

「わかった。カインも連れて行こう」

老人はほほ笑んだ。今度の顔の変化にはすべての人が気づいた。

カインはその老人ほほ笑を苦笑いで返すしかなかった。

「それでは、空間魔法で空間をつくります」

兵士はそう言うと一心に難しい呪文を唱え始めた。

それを見た老人は申し訳なさそうに

「あ〜、わしがやろう。その、なんだ、わしの方が・・・速く唱えられるかもしれないからな」

兵士が呪文を止め振り返った。

「し、しかし」

「大丈夫。場所のことはお前の記憶を渡してもらわなければならないが、今は急がなければならん」

老人の説得と、深刻な顔を見て兵士は何も言わず老人の目の前に立った。

老人は、目の前に立っている兵士の額に左手を当てた。当てたと同時に左手が一瞬眩しいほど光った。

そして老人は兵士から2、3歩離れた。離れる間際すまないと言ったが兵士には何を言っているのか少しの間わからなかった。

そして老人は静かにつぶやき始めた。誰かに聞かれてほしくないほどの小さな声で。

「大丈夫か?」

そういうカインが言いながら兵士の肩に手を置いた。

「だ、大丈夫であります」

「無理をするな。記憶を渡したんだ。大丈夫なほうがおかしい。ところでお前はアレをつくるのにどれくらいかかる?」

そう言ってカインはまだ意識のはっきりしていない兵士と話した。

「そ、それは・・・」

兵士は少し意識をはっきりさせたのか顔が赤くなった。それを見たカインは兵士が肝心な部分を言う前に言った。

「あのお方はすごいぞ。一瞬だ」

カインが言い終わる前に老人の呟きは終わっていた。

老人の前に真っ暗な空間ができていた。ちょうど老人の身長ぐらいの高さがあり横から見ると紙のように薄かった。

老人がまた呟くと真っ暗な空間は消えていた。かわりに先ほどまで晴天だった空が今にも雨が降り出しそうに変わっており、森と草原と動く者がいる空間が現れた。

「それでは行くとするかの」

そう老人はそう言うと空間に手を当てた。すると空間に波紋が広がり老人は空間に吸い込まれた。

それに続いて不満そうなカイン、少し青ざめた兵士が兜をかぶりながら波紋の治まった空間に吸い込まれた。



部屋に誰も座っていない椅子があった。

周りはものすごく広く、ほとんど何もなく、椅子の正面の壁に大きな扉があり周りの壁には窓があるが今はカーテンでしまっていた。

椅子の少し前に不自然な空間が広がっていた。ちょうど人の身長ぐらいの高さがあり横から見ると紙のように薄かった。

先ほどまで晴天だった空が今にも雨が降り出しそうに変わっており、森と草原と動く者がいて、その中に真っ黒なローブを着ている老人がいる空間が広がっていた。

Gallery   next→
Bbs

web拍手を送る